■第1回 文字・活字文化シンポジウム
「 日本の文化と図書館の役割 」の要約
日 時:平成19年1月13日 13時00分〜16時00分
会 場:日本出版クラブ会館
基調講演:「日本の文化と図書館の役割」
講 師:大串 夏身氏
昭和女子大学人間社会学部教授・総合教育センター長
日本図書館協会、日本 図書館情報学会、情報メディア学会の各会員
江戸東京博物館客員教授・文部 省電子図書館構想協力者会議委員など。
著書として『文科系学生の情報術』『DVD映画で楽しむ世界史』(青弓社)
『情報を探す技術 捨てる技術』(ダイヤモ ンド社)
『ある図書館相談係の日記』(日外アソシエーツ)ほか多数。
 |
中国は印刷技術、紙を発明し世界的な文化を約17世紀までリードしてきた。中国と近い日本には早期に印刷技術・紙が伝わり、平安時代には女性によりひらがなとカタカナが発明され、文化が形成され始め、紙と墨と筆との組み合わせで大量の書物を作り出し、蓄積していた。近世に入ると木版印刷が普及し、教育システムも整備され識字率が高まり、木版の多色刷り図書が普及した。これはまだサブカルチャーと呼ぶべきもので、東日本と西日本との独自な文化が存在しており、国としての文化としてまとまったものではなく、地域ごとに異なった文化が存在し、それを総称して日本文化といっている。
図書館とは人間が創り出した知的な成果を収集し、保存して、活用する場である。「知的な成果」は記録されたもので、図書をはじめとする印刷物と各種のメディアである。図書は、文化そのものといえるし、図書が一国の文化の質を規定しているともいえる。
図書館はそれ自体文化的な存在であり、図書館が所蔵している図書、雑誌、各種メディア等もそれ自体が文化的存在である。図書とはそれ自体が文化の結晶であり、人間にとって読む・知識を蓄積する・物語を紡ぐ・伝えるなど、創造するために欠かせず、人と社会・文化を作るためにも欠かせない存在である。
今では、国立中央図書館、大学図書館、学校図書館、公共図書館、専門図書館があり、それぞれが設置目的にあわせて活動している。公共図書館は地域の住民を対象とする図書館であり、その中で読書を進める事は、地域の文化や生活を活性化する上で大きな役割を果たしている。そして、今後もさらにその事が期待される。優秀な人材も育てていかなければならないが、公共図書館での採用は専門職としての司書枠はなく、予算的な問題もあるが人材投与を始め、図書館としての地域サービスなど、今後の大きな課題である。
パネルディスカッション:「図書館の可能性」
パ ネ リ ス ト
小峰 紀雄氏:小峰書店代表取締役社長・(社)日本書籍出版協会 理事長
(財)出版文化 産業振興財団副理事長
(社)読書推進運動協議会常務理事・子どもの読書推進会議副代表
(社)学校図書館整備推進会議議長・(財)日本出版クラブ副会長
東川久美子氏:台東区立大正小学校主幹(現在5年生担任)
東京都図書館研究会ブック トーク研究会所属
他校教職員や図書館員及び図書館ボランティアの研修等で実践指
導やブックトークについて講師としても活躍中
図書館ブックレット『読みきかせ』共同執筆のほか図書館流通セ
ンター 『edu』11月号巻頭特集、小学館『教育技術』等に寄稿
児玉ひろ美氏:JPIC読書アドバイザー
台東区立中央図書館にて非常勤司書として 児童担当の傍ら、
JPIC読書アドバイザーとして、子ども達におはなし会やブッ
クトークを行う一方、職員研修、ボランテイア養成等の読み手を
育てる活動を実践中別冊太陽『心をつなぐ読みきかせ絵本100』
共同執筆のほか小学館『教育技術3年生』
読売新聞『ヨミー』等連載中
江島 弘志氏:(鰍んや書店 代表取締役社長)
わんや書店は安政年間に出版社創業。明治20年代より能、狂言専門
の出版社になり、専門出版社となってからは四代目。
(社)宝生会理事・(財)日本文化生涯学習振興会21理事
能楽出版協議会代表
コーディネーター:大串 夏身氏
 |
「文字活字文化振興法」の中で、図書館の充実がうたわれ、「子供の読書推進法」の中でも図書館の充実がうたわれ、ますます図書館に対する期待と重要性が認識されてきている。
この様な情勢の中で、日本文化をささえる情報と知識を継承しつつ、新しい技術を活用しながら情報発信する図書館の今後の可能性について話し合われた。
基調講演を終えられたコーディネーター役の大串氏からのメッセージに続いて、パネリストの皆さんの自己紹介と、それぞれの仕事の立場から図書館との関わりについて説明され、ディスカッションがスタートした。
日本書籍出版協会の理事長でもあり、小峰書店の社長である小峰氏は、出版業界の立場から、メディア環境が変わり、テレビ・ゲームが活字離れ及び本離れにつながり、出版社、書店の売上が鈍ったとし、業界の読書推進運動が独自に展開された経緯を語った。また、母語としての日本語をどう取り戻していくか。その為には読書環境を作らなければならない。その為の振興法が出来、具体的な政策もいくつかある。法律が出来たのは基本であるが、民間の力で主張をしていく観点が大事である。文化継承は、地域社会がしっかりとし、再生しなければ望めない。その中心にあるのが図書館であると述べた。
小学校の教諭である東川氏は、子供は本を読まないと言われるが結構読んでいるように思われる。教室には数百冊の本を置き、読書の時間にはどのような本を読んでも良いと進めている。子供達は過去にこういう本を読みなさいとか、押し付けられて育ってしまっている。子供の読書を規制しているのは大人ではないかと指摘。
読み手を育てる事が図書館の可能性につながる。その為には学校図書館をきちんと整備していかないといけないが、予算と人手が足りないのでうまく運営できないでいる。そのためには、図書ボランティアを育てる事も大事であると述べた。
公共図書館にも勤務さている読書アドバイザーの児玉氏は、子供の読書離れは今に始まったことではなく、長年続いている事である。接する大人、大人の成熟度によって子供の読書率は変わるとし、「国立国会子供図書館」「子供の館」なども大人も利用し、そういった環境が出来てよかったではなく、子供と一緒により良い環境にしていく努力が大事であると述べた。また、子供と接する図書館司書の立場から、図書館は知りたい事が何だって分かる、ワンダーランドのように感じてくれる子供を育てていければ良いと思うと語った。しかし、その為にはボランティアとしての人的支援が必要とされるが、諸々の問題があることも事実とした。
老舗書店社長の江島氏は、過去の自身に照らし合わせて、子供時代に経験した感想文などの強要から本を敬遠するようになったとし、規制の弊害を指摘した。また、子供が本を読まないのは大人が読まないからで、親子で同じ物語を共有する事も大事であるとした。
能・狂言関連の出版販売に携わる見地から、一時期各地に20箇所ぐらいの能楽堂が出来たが、お金をかけた建物に見合うだけのスペシャリストがその数だけ存在せず、機能している能楽堂はたった2、3箇所であるという現状を話された。箱物ではなく、機能する理想の図書館を作ることは大変難しいが、行政の管理のもとで行えば良い方向に進むのではないかと結んだ。
以上、パネリストの皆さんの各立場から各種提起がされ、これからの図書館への期待とその可能性について、また、文化と図書館の関わりの重要性などについて、白熱した議論が展開された。
|
|