■第2回 文字・活字文化シンポジウム
「 読み書き文化と言葉の力 」の要約
日 時:平成19年4月14日 12時30分〜15時30分
会 場:中央工学校 STEPホール
基調講演:「読み書き文化と言葉の力」
講 師:肥田美代子氏
財団法人出版文化産業振興財団 理事長
私たちは、私たちの父母の世代の努力で、60年以上にわたる平和と、モノの豊かな社会を手にしています。いろいろな格差が生まれてはいるけれど、一番の心配は、自分と家族の「健康」という贅沢な社会であることに変わりはない。ダイエットも盛んだし、スポーツジムも盛況です。そんな贅沢な社会の様子がおかしい、荒みを感じます。
お金をめぐる凄惨な事件が繰り返され、最も安全なはずの家庭内で、子どもが親のいのちを、親が子どものいのちを奪う事件も連鎖的に起き、子どもの虐待やいじめも高い数値を示していますね。モノは豊かになったけれど、人の心も社会も、豊かな言語を育んだ里山も、荒れ放題のように見える。 里山の崩壊と軌を一にして、しみじみとした深い情感も崩壊しているようなのだ。
紫式部の『源氏物語』は「もののあわれ」の文学だといわれていますね。ここでいう「もののあわれ」とは、自然や人生に対して抱く、深い情感のことです。経済の繁栄と引き換えに、私たちは命の重さ、他者の痛みや悲しみに思いを寄せる心、そうした人間の微妙な情感を置き忘れてきたように思う。
一言で言えば、心の栄養不足ですね。心の栄養不足によって精神的な潤いの水位が下がってしまった。だから、いま大切なことは、心に潤いを取り戻す営みです。その営みとは、「活字文化」という心の栄養をしっかりと摂ることです。幼い頃から絵本を楽しむ習慣を身につけることで、心の栄養は補充されましょう。絵本は、子どもも大人も楽しめるように、選び抜かれた言葉と良質の絵とで構成されています。
乳幼児は、書かれた文章が読めなくても、読んでもらうことで、自分の想像力を目いっぱい働かせて物語を理解します。失われた情感は、たくさんの本と出合い、長く付き合うことで育まれる、私はそう信じています。個人の豊かな情感の集合が、落ち着いた社会への一歩となりましょう。
語り実演
語 り 部:藤田 浩子氏
おはなしおばさん
パネルディスカッション:「読み書き文化を支え育てる図書館」
パ ネ リ ス ト
藤田 浩子氏
多和 泰美氏:財団法人日本漢字能力検定協会
谷萩 礼子氏:桜蔭学園 古典講師
コーディネーター
大串 夏身氏:昭和女子大学 教授
読み書き文化を支え育てていくには図書館はどうあるべきかについて話し合われた。コーディネーター役の大串氏からのメッセージに続いて、パネリストの皆さんの自己紹介がありディスカッションがスタートした。コーディネーター役の大串氏は、「日本語を母語とする日本人として、日本語に関わりながら子供を育て、人を育てていかなければならない。それには図書館をもっと盛んにしていかなければいけない。図書館というものはそもそも図書というものを中心に人類が作り出してきた知識であるとか文化を収蔵し、なおかつそれを人々が使うことによって良い文化と社会を作り出していきたいという大きな役割をもっている。特に最近図書館が期待されるところは、地域、学校、大学の中で読書というものをもっと盛んにしていくという役割を担っている。」と、図書館は人と図書とを結びつける場であると述べた。(財)日本漢字能力検定協会の多和氏は、「読書はしたほうが良いというものではなく、しなければ人間ではない。地球上の動物の中で唯一人間だけが過去にあったことについて記録を残せ、知恵を蓄積できる。漢字を獲得してまず日本語で書かれてる本に対する障壁を下げる。読書をするための障壁を下げるためにはまず漢字力を鍛えなければいけない。漢字力を体得したら読書のハードルが下がる。読書をする教養が身につく、さらに漢字力も上がるという好循環が起こる。」と述べた。古典の教師である谷萩氏は源氏物語を例に日本の古典を読んで理解し、場面を想像することの素晴らしさ読書の大切さを述べた。語りの実演をしていただいた藤田氏は、「この頃の若い方は知っている言葉が少ないわけではなく、人と人が関わるための言葉、人と人が付き合っていくための言葉、人を理解しようとする人をいい気分にさせる、そういう分かり合うための言葉が少なくなっている。」と話された。読み書きでも読書の重要性を再確認し、図書館という本が置いてある場をもっと充実させ、皆さんに関心を持ってもらい発言してもらえたら充実した状況がうまれる。
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